応募してきてくださった渡保育園の深水園長先生は第2次世界大戦でたくさんの友人をなくした経験を持つことから、こども達に平和を伝える大切さを実感してきた方です。1980年から毎年8月9日の長崎原爆忌を“平和保育の日”として活動してきたこの保育園では、こども達のみならず父兄・家族とも苗木との関わりを考える植樹式を開催。植樹式に先立ち、「柿の木愛称募集」や「父兄が10年後のわが子に送る言葉のタイムカプセル」といった親子で柿の木を考える機会を設け、植樹式ではその愛称発表としてこども達が「かきまるくん」、「かきえちゃん」という名前を元気よく発表しました。またこども達と先生方で作った創作紙芝居「柿の木親子のものがたり」は、こども達に馴染みのない戦争をわかりやすくとらえ父兄からも大評判でした。
さらに保育園の父兄をはじめ広く県下の人々に参加を呼びかけるイベントとして、大分在住のアーティスト二宮圭一さんの「風船あげ・プロジェクト」が行われました。これは渡保育園に柿の木が植樹されたことを知らせるとともに、柿の木との関わりのきっかけづくりとして県下や父兄に呼びかけて、200個ほどの風船を一人ひとつずつ膨らまし、つなげてアドバルーンのように上げるもの。そして、そこでその風船を見ながら参加者全員で昼食を楽しみ、植樹のことを話し合いました。このイベントは人々が柿の木との時間を共有し、新しい人々と出逢う“場”を提供することを目的としたもので、こども達にとって馴染みある風船という素材を用いることで、日常のなかで再び風船を見たとき、柿の木を思い出してもらえることを願って行われました。その後も、保育園では毎年柿の木の下で平和教育が継続され、2001年、柿の実から種を7個採取。2002年5月30日、被爆柿の木3世が誕生しました。
2006年8月5日には10周年祭が行われ、当時4、5歳だったこども達と、その保護者、二宮圭一さんと共にタイムカプセルが開けられ、柿の木とこども達の成長と再会を祝福し合いました。