出版記念展覧会 「kaki story 1995~2012 -つながる・ひろがる柿の木の旅-」 in BLD GALLERY

「時の蘇生」柿の木プロジェクトの事務局にはたくさんの宝物がある。それは、世界中の人々、子どもたちが被爆柿の木二世の苗木のために生みだした、たくさんの作品たちである。この夏、「柿の木の物語」の出版を記念して開催された「kaki story 1995~2012 -つながる・ひろがる柿の木の旅-」は、それらの作品たちを主役とし、世界中から寄せられた平和への想いと生命のエネルギーを伝えるものであった。
長く実行委員をしている者でさえも目にしたことのなかった作品たち。それらに共通していることは、「被爆した柿の木のことをよく理解した上でつくられているものであること」「‘アートとはこうでなければならない’というしがらみに縛られていない、自由な表現、子どもたちの内側から自然と溢れ出た表現であること」である。子どもたちの作品は、カラフルで線や形がおもしろいものが多い。だからといって、ただ単に‘かわいらしい’わけではない。柿の木がくぐりぬけてきた真っ暗やみの状況をふまえた上で、平和への強い想いを表現しているのだ。
フランス・アビニョンでの植樹の際つくられた柿色の人型のオーナメント(*1)は、子どもの等身大サイズで動きもあるおもしろい作品である。しかし頭部はなく、その肢体は爆撃や原爆、戦争の新聞記事で構成されている。イタリア・バレーゼの子どもたちが詠んだ詩(*2)には、原爆を乗り越えた柿の木への賛美や尊敬の想いが情熱的に表現されている。また、イタリア・ブラーノ島の少年は、柿の木との出会いや楽しい思い出を詰め込んだ柿の実形の箱(*3)を、ある日突然作ってきたそうだ。その少年は何事にも積極的に関わることのできない子どもだったが、柿の木に出会ってから変わったという。
展覧会は大小2つの部屋で行われた。小さい部屋では世界中の植樹地で撮られたたくさんの写真がはられ、実際の柿の木や、子どもたちが楽しみながら柿の木に接している様子を知ることができる。また、大きな部屋では、若い被爆柿の木二世を思わせるほっそりとしたシンボルツリーを取り囲むように、子どもたちの作品が展示された。そのシンボルツリーの奥の壁には、母親の柿の木のように幹のしっかりとした木が、ヴェネチアビエンナーレの時のメッセージカードで表現された。そしてそれらの木の間を、イタリアのブラーノ島の子どもたちが作ったカラフルな鳥が飛びかった(*4)。この空間を木立の間のように感じたのか、「森の中にいるみたいだ」と話してくれる少年もいた。
この空間では、会期中、トークイベント、ワークショップやパフォーマンスが行われ、たくさんの大人や子どもたちでにぎやかになり、シンボルツリーには夢や希望が記されたメッセージがつけられていった。その様子は、あたかもカラフルな実がどんどんとなっていくかのようで、柿の木がたくさんの人々の中でイキイキと大きくなっていくようすを象徴するかのようであった。

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