シンポジウム 「社会に飛び出すアート」 東京都美術館

このシンポジウムは、「時の蘇生」柿の木プロジェクトをより多くの方に知ってもらうために、また、柿の木プロジェクトの重要な側面である「社会と深く関係するアート」「生活と共にあるアート」という視点に重点を置き、開催されました。モデレーターに美術ジャーナリストの村田真氏をむかえ、パネラーとして、ジェームス・リングウッド(イギリス、キューレター、アートエンジェル共同代表)、カトリーヌ・グルー(フランス、美術史家・美術評論)、ジャン・リュック・ヴィルムート(フランス、美術家、パリ国立高校美術学校教授、林容子(評論家、アートウッズ主宰・武蔵野美術大学講師)、宮島達男(「時の蘇生」柿の木プロジェクト起案者・美術家)の5名が参加しました。第1部の宮島達男の「時の蘇生」柿の木プロジェクトの基調活動報告では、柿の木プロジェクトを立ち上げた思いや、目指すものが語られました。その後、第2部のパネルディスカッションでは、モデレーターの村田氏から、今のアートは社会からかけ離れているようにみえるが、アートはまぎれもなく社会から生まれ、公共的な価値を有する社会的存在であったはず、今回のシンポジウムではそんな不幸な時代のアートと社会の関係修復したいとの思いが語られました。リングウッド氏は、アートエンジェルの活動を紹介しながら、アーティストと市民が一緒に新しく未開拓な領域を探検できるように、街の中で展開するプロジェクトを紹介。プロセス自体がケミストリー(化学作用)」を起こしていくことが話されました。グルー氏は、現在手がけているイル・ド・フランスのプロジェクトを紹介し、社会の中でアートが具体化していくプロセスの重要性についての話、ヴィルムート氏は彼が参加した2つの展覧会の作品「チャンス・バー/1996年」(広島アート・ドキュメント96シチュエーション)、「オリーブのカフェ/1994年」(ギャラリー・アナディール、東エルサレム)の紹介がありました。林氏は独自の柿の木プロジェクトについての分析をまじえながら、アメリカの社会と関わる5つのプロジェクトを紹介してくれました。
最後のディスカッションでは、「アートは社会と無関係ではいられない」「美術館の。中だけでアートは完結しない」「むしろ、積極的に外へ飛び出し、日常生活の中にアートが入りこんで意識を変えてゆく事が大切では」など、海外の事例を含む新しいアートの動きを考察し、活発な議論が行われました。このシンポジウムはポーラ美術振興財団の助成、アートリンク上野・谷中実行委員会の協力のもと行われました。

blog画像

これまでの活動